白井京月の研究室

経済学・社会学・政治学

ネットワークとつながりの違い

経営の歴史を見ると、階層型から事業部制へ、あるいはネットワーク型組織へという流れがある。また、最近ではソーシャル・メディアをネットワークと呼ぶこともあるし、ネットワークという言葉から連想するイメージは人それぞれだ。

 

数年前は、コンピュータを使ったSNSでのつながり分析が話題になった。個人間のつながりがコンピュータによって把握、管理できることの衝撃は良きにつけ、悪しきにつけ大きかった。そこでは、つながりがネットワークと同義なものとして認識されていた。硬直的で強いつながりより、流動的で弱いつながりが重要になるという意見もあった。しかし今ではfacebookの友達が多すぎて疲れるといった弊害も目立ってきている。

 

つながりが大事。友達を増やそう。未だにそう考えて実践している人たちがいる。facebookやtwitterで友達やフォローに1000人を超える人も珍しくない。いったいその友達の何を知っているのだろう。友達とは何だろう。そもそもネットでつながっているだけで、どこが友達なのか。

 

メディアは煽るのが仕事なので、ソーシャル・メディア・マーケティングやビッグデータなど、次々とネタを作る。そこにイノベーションがあることは認める。しかし、基本構造はコンテンツやサービスを売る人になるか、買う人になるかという点で昔と何も変わらない。スケールフリーの法則は生きている。SNSで顧客管理が、マーケティングがやりやすくなっただけのことだ。そして、商売上手なフリーランスやノマド達は友達という名前の顧客をどんどんと増やし、プチ・カリスマになる。つながりなんていろいろだ。まったくないのも困るが、商売をやるのでなければプライベートの友人など10人もいれば多い方だろう。まあ、友達の定義にもよるが。

 

一番大きな勘違いが、つながりをネットワークと同一視することだ。ネットワークには目的があり、それぞれに機能がある。ネットワークではつながりに意味がある。しかし、今のSNSのつながりは特定の目的も役割もないただの情報の流路だ。SNSで権力構造が変わると言い切った学者もいたが、相当におめでたい夢想家だったことが今になってわかる。

 

インターネットが、そしてSNSが歴史的な革命であることは認める。しかし、ネットワークとつながりの違いを理解し、つながりとは何かを考えることはとても重要だ。くれぐれも頑張って「友達」を増やして「上客」となり、時間とお金を浪費することのないように、空気に踊らされることのないように注意したい。

 

ああ、「空気踊り」はこの国の伝統文化だったか・・・。