白井京月の研究室

経済学・社会学・政治学

日本という国の現在

近隣に友達のいない孤立した国。それがいまの日本だ。アメリカからも、いまや厄介な同盟国として問題児扱いされている。冷戦の時代は大昔に終わり、いまはアメリカも中国との連携を深めている。国内メディアは、日本の世界的な位置づけを報道しない。そして多くの国民は日本を先進国だと未だに信じ、成長戦略などという昭和の亡霊にとりつかれている状態にある。

現在交渉が進められているTPPとは、日本という国を国際資本に売却するというものだ。1%の富裕層が99%のプレカリアートを買いたたくことだ。これは豊かな国の貧困な人々というアメリカの現状を追随する結果になるだけで終わるだろう。もっとも、一部の知識人や俺が何を叫ぼうが、洗脳された大衆には聞く耳がない。言論は、まったく異次元の戦略を必要としている。

秘密保護法、社会保障制度改革、なども進んでいる。憲法改正より前に解釈改憲が行われている。資本の言いなりになる政治。それがコーポラティズムという現象だ。安倍首相は「日本を世界一企業活動のやりやすい国にする」と国会で宣言した。今年の2月のことだ。これは、国民よりも企業を、人間よりも経済を優先するという宣言である。これに怒らないメディアの、そして大衆の鈍感さ。本当に現実が、そして未来が見えていないのだろう。言論は、まったく異次元の戦略を必要としている。

いったい、いかなる人物が現在の政治の悪しき流れを変えられるというのか。「無駄な抵抗はやめよ」そんな声だけが聞こえてくる。できることと言えば、自己防衛であり、自己防衛の方法を伝えることくらいしか思い浮かばない。信頼できるネットワークを作るとか、法律や制度に詳しくなるとか。言論は、まったく異次元の戦略を必要としている。

大衆は、日本語という壁の問題もあって閉じられた空間の中でしか日本を見ていない。その自画像と、世界から見た日本の姿との大いなる乖離を知らない。もっと言えば、日本の政治家も、メディアも、御用学者たちも、国際社会の文脈を共有できていない。そういう国がどういう運命をたどるのかは、歴史を学んだ者であれば察しがつくだろう。ブログに戯言を書いて憂さ晴らしをしている場合ではない。言論は、まったく異次元の戦略を必要としている。

今の日本では社会の断層化が進んでいる。それは経済格差である以上に、知識格差であり情報格差だ。あるいは人間としての意識の格差だ。売られて行く日本を眺めながら、それでも、何度でも叫ぼう。

「言論は、まったく異次元の戦略を必要としている」