白井京月の研究室

経済学・社会学・政治学

精神科医療とは何か

ある人から、「患者から見た精神科医療への疑問」を書いて欲しいと言われた。数多くの事例を調査したわけではないが、10年を超える病歴と入院歴、多くの病院や医者を見てきたという点で、一般の人より詳しいとは言える。今日は精神科医療という独特の世界について、思うところを簡単に書いてみたい。なお、これは誹謗中傷ではない。あくまでも私個人の感想だ。

1.精神病は存在するか
1970年代には過激な反精神科医療の動きがあった。精神病という病気には科学的根拠がないというもので、患者の治療や入院を否定するようなものだった。確かに科学的ではないかもしれないが、精神病はあると私は思っている。ただ、今現在は新型ウツや発達障害など少し社会にとって都合の悪い人は病気にしようというオカシナ動きがあると感じている。これは精神科医療と製薬会社の市場拡大戦略だろう。そして反(非)社会的因子を排除しようという権力や社会の意向に沿っているのかもしれない。このような精神科医療の暴走には監視が必要だと思う。

2.治療は可能か、また必要か
私は躁うつ病だが、薬は必要だと考えている。ただ、それは一時的に症状を抑えるだけのものだ。再発防止や維持量という名目で長い期間薬を飲むことにどれほどの意味があるのか。体感的には、薬の影響で状態は良くならず、医者はそれを症状と見做してさらに長期にいろいろな薬を試すことになる。儲かるのは医者と製薬会社だ。患者は薬の副作用でダメージを受けるだけではないのか。そして、長期に服薬した場合には離脱症状がある。しかしこれも病状とされてしまい、減薬の失敗=離脱症状を医者は認めない。精神科医の権威は過大だと思う。

3.福祉の罠
精神病患者に対する福祉はいろいろある。障害年金障害者手帳自立支援医療制度、就労継続A型、B型などだ。これらは自己申告である。自らを障害者であると認めて申告すると、お金やその他の便益を受けられる。しかし、これは両刃の剣だ。これによって患者は障害者としての人生を、つまりは貧困と病気を抱えた人生を受け入れざるを得なくなる。保障されるのは生存=命だ。これがはたして健全な福祉だろうか。一般社会と精神病世界との間に絶対的な溝を作っているだけではないのか。もちろん良い面もあるのだが、悪い面もある。

4.精神科医
精神科医と言っても、単科病院、大学病院、街のクリニックなど、どういう病院に勤務しているか、勤務していたかによってタイプが異なる。単科病院やその経験者の多くは、QOL(生活の質)を考えない人が多いように感じる。生きていればそれでよし、そういう医者が多い。また、福祉制度に無知だったり、消極的な医者もいるし、自分の価値観を前面に出す医者もいる。非常識な発言をする世間知らずの医者も多い。腕が良く、かつ人間的にまともな医者が何%いるだろう。多くの医者が、薬漬けにして、一生患者(顧客)になって欲しいと心の底で思っているのではないのか。また、患者の方も医者と仲良くなって、ずっと友達のような話し相手が欲しいと思っているのではないのか。これでは病気が治るはずも無い。

5.精神科医療の周辺
カウンセリング、セラピー、代替医療などもある。医療ではないので効果は謳えないが、何十万人という人が、この分野で働いているものと推定する。私も経験があるが、意味があるのは、その時の辛さを紛らわすことだけだと思う。(それも意味があるとは思うが)重要なことは、目標に対して効果がどうだったかであり、その結果がエビデンス(証拠)として示されることだ。もっとも、これは精神科医療にこそ言えることだろう。治療目標が何で、効果がどうだったのか。治癒率は何パーセントなのか。因みに、躁うつ病寛解率は3%と聞いたことがある。果たしてこの数字が治療の効果と言えるだろうか。

6.精神科医療の怖さ
ある人が、たった一日の不眠で心療内科に行き薬を貰った。そのために会社を休んだ。会社は診断書を求め、その人は心療内科で診断書をもらい会社に提出した。その会社は零細企業で、担当者は心療内科の診断書を見て焦った。そして、その人は勧められるままに休職することになった。その後、復職したいので就業可能の診断書を医者に求めたところ、医者はそのような診断書は書けないと言った。女性は涙ながらに抗議したが、結局、会社を解雇された。つい、心療内科の門をくぐったばかりに、この人は人生が変わってしまったのだ。
精神科医療業界は「心の風邪キャンペーン」で売上を伸ばし気を良くしている。しかし、実際には病気とは言えない人を次々と患者にすることで、その人たちを貧困に追い込んでいる。そして言葉巧みに永遠の患者にする。相手はプロだ。逃れることが出来ない人が多いのは当然だろう。

7.世間の誤解(最大の問題)
一番の問題は精神科医療に対する世間一般の誤解だ。精神科医療の実態を知らない人は、簡単に「医者の言うことをちゃんと聞け」、「言われた通りに薬を飲め」と言う。しかし、精神科医療が科学とはほど遠いものであるということを、医者の治療で良くなる病気ではないということを、その人たちは知らない。何よりも、薬の危険性について無知だ。鬱の人に「のんびりと楽しいことだけすれば」と言うくらいに、無知なのだ。
精神科医療の実態、薬の怖さ、治癒率、国際比較など、もっともっと啓蒙しなければいけない。もちろん、厚生労働省は医師会や製薬会社の利益を守る組織なので、そんなことをする筈もない。問題意識と正義感を持った専門家に期待するしかない。

書きたいことはまだまだあるが、今日はここまででやめておこう。

(初出:2013.1.24 ライブドアブログ