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Energy flow

黒崎玄太郎研究所

節制のお年頃

Energy flow

4年前、こんなコラムを書いた。

 

「フールズ・ジャーニー」

「フールズ・ジャーニー」(愚者の旅)をご存知だろうか。これは、タロットカードの大アルカナをめぐる物語だ。私なりの解釈を簡単にまとめておこう。

 「0:愚者」は生まれたばかりの子供。まだ何も知らないが希望に満ちている。

その愚者が、最初に出会うのが「1:魔術師」だ。これは世界を構成する要素を示す。愚者は世界が物質でできているということを学ぶ。

 次に出会うのが「2:女教皇」。このカードは神秘と世界の二項対立を表したカードだ。愚者は対立原理と世界の神秘に直面する。

 「3:女帝」はまさに女性の象徴であり、豊かな実りと、母性本能を表している。愚者はここで母を知り、安らぎを得る。

 次に愚者が出会うのが「4:皇帝」。母性原理の次に知るのは、父性原理。愚者はここで厳しく教育される。

 「5:法皇」は、社会の権威と秩序を示している。愚者は社会の中へと進んで行くのである。

 「6:恋人」そして愚者は恋をする。人生の喜びを知り、世界はそれを祝福する。

 「7:戦車」で、愚者は自信を持って前進する。しかし彼はまだ若く未熟だ。勝利は長続きしない。

 「8:力」愚者は戦いを通して真の強さを学ぶ。それは寛容の精神を備えた懐の深さだ。愚者は大人になった。

 「9:隠者」は物質的な世界への興味を失い、ただ自らの内面を探している。冬の夜、雪の中に一人立っている。これは愚者の姿。彼は悩んでいる。

 「10;運命の輪」やがて愚者は、世界を支配する法則に気がつく。それは、時の必然であり、運命的なものだった。再び愚者の時計が動き出す。

 「11:正義」愚者は正義に情熱を傾ける。社会的な地位を得て、世界の表舞台に登場する。

 「12:吊るされた男」栄光の次にあるもの。それは献身だった。愚者は自ら進んで吊るされることを選んだのだ。奉仕すること。愚者は積極的に奉仕する。

 「13:死」愚者はこれまで住んだ土地を離れ、新しい世界へと進む。一つの人生が終わり、新しい人生へと向かう。新しい世界へと進む時、古い世界は捨てなければならないのだ。

 「14:節制」新しい人生の始まりで、愚者は節制を学ぶ。自然との調和。生命の根源を見つめて、愚者は悟る。

 「15:悪魔」次に愚者は悪魔と出会う。悪は人間の欲望という本能の中にある。本能に留まりたいという思いに、悪魔は語りかける。それは自らの自由を放棄すること。それでも愚者は悪魔の言葉を聴いてしまう。

 「16:塔」このカードには塔の崩壊が描かれている。死でリセットされたかに見える愚者の人生は、ここで完全に終わる。いや、この時はじめて、愚者は過去から、これまでの世界から解放されるのだ。真の新しい人生はここから始まる。

 「17:星」愚者は星を見上げる。そして星の輝きに魅せられ、宇宙を思う。神の理想の世界。その中に自分がいるということを知る。愚者は自らの肉体を清める。

 「18:月」神秘的な月の姿を見て、愚者は自らの内面に入って行く。深い瞑想の中で見えてくるもの。創造のエネルギーが満ちてくるのを実感する。

 「19:太陽」夜は明け、太陽が大きく輝いている。愚者は再び子供の姿で世界に登場する。愚者は豊かな世界に到着したのだ。

 「20:審判」愚者は復活した。すべての生命は再生される。歓喜と喝采の時。それは解放の時でもある。

 「21:世界」愚者は最後のカードである世界にたどり着く。過去の体験が血となり、肉となって、やがて愚者は天に昇る。思い残すことは何もない。愚者は微笑みの中にある。

 僅か22枚の大アルカナは、人生で学ぶこと、体験することの本質を示している。もちろん順番は自由だし、欠ける場合もあるだろう。タロットを用いている小説家も少なくない。

 

以上が4年前に書いた文章だが、今の私は14番の節制を学ぶときだと思う。放縦な私は放縦だった。酒、たばこ、賭け事、女。いい加減、節制を学べと天から言われているように思う。

 

急にやめるのは良くないので、徐々に控えよう。酒と煙草。節約は必須だ。

さて、この物語で私が思うこと。それは人生は二度、いや、場合によっては三度、四度とあるということだ。上の例では、最初は世俗の社会で生きていた主人公(愚者)が、やがて精神世界へと移り住む。主人公は体験を通じて変化し、成長している。

 近代以降、成長志向、成功願望が当然のことのようになっているが、物質的な豊かさが真の豊かさではないということを、この物語は教えてくれる。稀にではあるが、良い顔をした老人に会うことがある。その顔には、その人の人生が滲み出ている。その美しさは、若い人の持つ美しさとは異質のものだ。良い顔の老人には、多くの経験と多くの思索の跡がある。さあ、人生を二度生きよう。もし、二度生きていたならば、三度目を生きよう。新しい世界は必ずある。