プール

「プール」 白井月

完全なる覚醒を求めていた
過剰なメタファーの海を泳ぎながら
そこが海ではなく
巨大なプールであったことを知る

プールサイドに咲くビーチパラソルの花
ハイビスカスの花
いたるところに転がっているロゴス

プールの底は珊瑚のようなものでできていた
商品のような男たちの笑顔
この時代にありがちな甘い笑顔に
嘔吐を感じる

市場でいう人間的なものと
私のいう人間的なものは
まったく無関係で
なんの接点も関係もないようだ
そういう関係にあるという言い回しを除いては

水面から顔を出すと
そこには汚染されている空気があった

太陽はどうやらまだ商品化されていないようだ

プールを出ると
小麦色に焼けた肌の、サングラスをかけた女性がいた
よく見るとマネキンだった

マルチーズが洋服を着て歩いていた
すべてを中和するような音楽が流れていた
私は映画の中にいるのだと思った
それは、現実よりも少しだけリアリティがあった

そんな夢を通勤電車の中で見た
そして電車の中でこのメモを書いた
その電車に、プールはなかった