白井京月の研究室

経済学・社会学・政治学

オルタナティブより移行計画が問題なんだよ

ネットには原発問題、社会保障、増税や経済政策などの批判を延々と続けている人が山のようにいる。もちろんオルタナティブ(代替案)を出しているプロやセミプロもいるが、そんな主張だけでは現実は変わらない。重要なのはビジョンへの道筋を示して現実的な移行計画を作ることだ。これは評論家ではなく専門家の仕事なわけで、それも極めて難解な仕事なのであって、浅い知識と情報で自信満々に自説をのべるというのは、滑稽でしかない。

 

社会を一つの世界に喩えるならば、それは一つの大きな船なわけで、改革というのは船を動かした状態で改造しないといけないということだ。「はい、新しい船を作って乗り換えましょう」などちうわけに行かないことは明白だよね。

 

民主主義というのはポピュリズムという傾向から逃れられないわけで、誰にでもわかる底の浅いビジョンを進化したマーケティングを用いて人気を得た政党が政権を取るようにできている。もっとも、日本は政治学的には官僚制に分類されていて、政権を取ったからと言って公約が実行できるわけではない。専門家である官僚と政治家で高度な議論をした場合に、どちらが勝つかは明白だ。

 

昨年は民主党政権だったが、官僚からしたら赤子の手をひねるようなもの。つまり、政治家もそれなりに高度な議論ができないと役には立たないということだ。

 

大衆は簡単にデフレ脱却、景気対策、社会保障制度の見直し、原発問題への対応などと問題を列挙し、それが政治の責任だと言うけれど、問題はそれほど単純ではない。また、魑魅魍魎とした一般人の知らない世界もある。浮かれたスローガンに騙される人のいかに多いことか。市民としての自覚があるならば、選挙に行くだけでなく、もっと勉強して考えることをするべきだ。もっとも、時間のない大多数の被雇用者には無理な話かもしれないけれど。

 

俺が言いたいのは、浅薄でわかりやすいビジョンやスローガンに脊髄反応しないで欲しいということ。重要なのは実行計画であり移行計画の方なんだからね。もちろんフィージビリティ(実現可能性)のないビジョンなど問題外ということになる。

 

ただ、政策や制度の詳細は難しくても、日本をあるいは地域社会をどんなものにしたいのか、という思いを持つのは大切なことだ。日本は、世界の潮流であるデフレと高齢化の最先端を行く国なので、その舵取りに世界は注目している。

 

俺の意見は今までも書いてきたし、これからも書いてゆく。今日はここまでにしよう。ただ、敵国を想定して国民という集合的アイデンティティに火をつけることで選挙に勝とうという政治家は最悪だということを付け加えておく。