白井京月の研究室

経済学・社会学・政治学

8.仕事をする理由

巷には「なぜ働くのか」だとか「働くとは何か」といった本が氾濫しているが、こんな簡単な問題は数行でまとめられる。多くの人が、答えは一つという前提で考えているからいけないのだ。

仕事をする理由は、以下の三つの要素を考慮したうえでの判断である。

1.その仕事をすることが楽しい。
   (やりがいを感じる、夢中になれる、充実感が得られる)

2.その仕事は金になる。
   (最低限生活できる必要があるし、多いほど望ましい)

3.その仕事は、広い意味での資産を築く。
   (お金、キャリア、スキル、資格、人脈、体力、等)


この考えが間違っているとは思わない。しかし、いま仕事を探している人や、ワーキングプアといわれている人からすると、この考え方は仕事を選べる立場にある人の話であって、何の役にも立たない、いや、むしろ腹立たしい考えだったのではないのかと今ごろになって思う。

精神的報酬、経済的報酬、広い意味での資産、どれを重視するのかを明確にしておくこと。売れなくても作家を目指すのか、単純労働でも高賃金の仕事を目指すのか。この辺は人それぞれだ。

ここで気をつけることは、経済的報酬にマイナスはないが、精神的報酬にはマイナスがあり得るということだ。社会的に罪悪感を感じるような仕事や、社内での人間関係が最悪の場合などは、過労死やメンタル的な病に陥る可能性もある。これでは、いくら高給でも差し引きマイナスであることは明白だろう。

終身雇用や年功序列の時代は終わった。これからは、一般のサラリーマンにとっては冬の時代だと言われている。会社にしがみついて生きようとしても、その世界が安泰だとはなくなった。上記の3項目の3番目、広い意味での資産(お金、キャリア、スキル、資格、人脈、体力、等) のうち、特にスキルと人脈は重要になる。

人脈とは有名人や有力者と知り合いになることではない。仲間と呼べるだけの友達や、気軽に相談できる専門家などだ。

人生設計の難しい時代になった。人生設計など不可能だし、設計など不要だとも言える。しかし、自分が何に喜びを感じるのかは点検しておきたい。何が仕事の原動力であり喜びなのか。働いている人なら喜びは誰にでもある。そうでなければ働いたりしないはずだ。それとも辞めるべき状況なのだろうか。

え、「仕事をするのに理由はいらない?」(ま、負けたか?・・・笑)

(2013年5月)