白井京月の研究室

経済学・社会学・政治学

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

三流学者の床屋談義あるいは知性の敗北

学者という肩書きと薄っぺらい知識を利用して、自らのイデオロギー的なものを開陳することで人気を得ていう三流の学者の言説が害毒であることは言うまでもない。もっとも、それに共感する大衆も大衆だが、大衆は地位や肩書にとても弱く、考えるだけの力も知…

三つの貧困と思想的バトル

生活保護や社会保障、さらにはブラック企業やワーキングプアの話題が盛んだ。これについては、いろいろな考え方や立場があるが、まずは経済的貧困と時間的貧困という切り口から貧困を三つに分類した。 まず、<貧困ー1>では、お金も時間もない。いわゆるワ…

社会変化の方程式

「文明の接近」で有名なトッドは、識字率が上がると、出生率が下がり、近代化(民主主義革命)が始まるというシーケンスを証明した。彼はソビエトの崩壊を、そしてアラブ革命を予言した学者として注目されている人物だ。トッドはまた、家族システムが社会構…

人類の普遍性と家族システム

「文明の接近」で有名な家族人類学者エマニュエル・トッドは、世界には8つのタイプの家族型があるという。なかでも典型的なのが権威主義核家族と、平等主義核家族だ。その差は、兄弟について長男に優越性があるかないかが識別の要素になる。長男が優先され…

真の欲望を突き進め

欲望を中断し、内的欠如、至高の超越者、見えすいた外部、という三つの亡霊に、欲望を依存させる基準を排すること。(「千のプラトー」ドゥルーズ=ガタリ 河出書房新社 より) 俺のような一流の哲学者でも、ある程度社会的に成功しておきたいと思うことがあ…

日本という国の現在

近隣に友達のいない孤立した国。それがいまの日本だ。アメリカからも、いまや厄介な同盟国として問題児扱いされている。冷戦の時代は大昔に終わり、いまはアメリカも中国との連携を深めている。国内メディアは、日本の世界的な位置づけを報道しない。そして…

精神科医療と人格改造

精神科医、村井俊哉氏の「人の気持ちがわかる脳」(ちくま新書)という本を読んだ。昨今の新書ブームで指摘されている通り、全般に新書の質は著しく低下している。申し訳ないが、本書もその例に漏れないと言って良いだろう。筆者の主張した点と全体の構成が…

情報中毒と情報失調

久しぶりに「情報環境学」大橋力著(朝倉書店、1989)を引っ張り出した。俺がこの本を入手したのが1990年の5月5日。俺はまだ20代で、時代はバブルで、もちろんインターネットは普及していなかった。大橋氏の情報環境学とは次のようなものだ。 物…

世界という劇場の通行人

世界とは劇場である。交通や通信の発達した現代では、世界中の劇について知ることができるし、実際に劇に参加することもできる。戦争、テロ、事件、事故、スキャンダル。これらはもはや現実である以上にエンターテメントだ。こんなことを書くと、冗談ではな…

グローバル化とはプレカリアートの拡大である

グローバル化についての説明はいらないだろう。プレカリアートにつては一応説明しておく。プレカリアートとは、不安定さを意味するイタリア語のプレカリティと、労働者階級を意味するドイツ語のプロレタリアートを組み合わせた造語だ。つまり、プレカリアー…

「大学入試に人物評価」は拙いよ

政府の教育再生実行会議は国公立大学の2次の学力試験を廃止し、人物重視の面接や論文に変えて行く方針であることを明らかにした。これは本当に危険だ。人物重視ということは、望ましい人間像を規定するということだ。いったい誰が、この望ましい人間像を定…

自由と人権を嫌う日本人の深層心理

驚くべきことに、日本では「権利ばかり主張するという非難」が言説として成立し流通している。今日も某国会議員がそんなことを言ったらしい。それを報道するマスメディアも、なかばこの言説を支持しているのだろう。権利を主張するのは当然のことだ。それを…

脱成長の経済学の難点

経済成長というスローガンが賞味期限切れとなった今も、経済成長の信者は多数派である。経済成長という装置は100年以上にわたって人々の欲望を燃やす続けるエンジンとして機能し続け、今もそれなりに機能している。しかし、もう何十年も前からそのメカニ…

日本の人口推移から見た経済成長の不可能性

少子高齢化と言われる日本だが、大正10年から2050年までの人口の推移をグラフにしてみた。 戦争による人口減のあとの高度経済成長期には、15-65歳人口(生産力年齢)が増えている。つまり人口動態から見て、ある意味で高度経済成長は必然だったと…

コミュニティ性とクラスタ性の関係についての考察

コミュニティというのは家族や学校、会社や地域社会、あるいは趣味の集まりなど人間的なつながりのある集団のことだ。利害抜きの第一次集団から、単なる制度的なものまで、その強度はいろいである。 一方、クラスタとは、個人の複数の属性や特性を数学的手法…

キャズムを超えないという戦略

キャズムとはビジネス・パーソンには馴染みの言葉だろうが、知らない人がいるかもしれないので説明しておこう。 キャズムとはエヴェリッド・ロジャースが提唱した下記の「ユーザーの5分類」だ。 1.イノベーター 2.5%2.アーリーアダプター 13.5…

インフルエンサーの条件

20年以上前の話だ。木下玲子氏の「インフルエンシャル―影響力の王国」を読んで衝撃を受けた。世界はローズ奨学金で学んだ超エリート達によって完全に支配されていることを知った。資本は若い才能を必死になって探し、買う。まだそれが可能な時代だった。し…

下部構造としての経済と情報

マルクスのいう「下部構造」とは社会の経済的構造であり、これは徐々にしか変化できないと考えられていた。しか、インターネット革命以降、情報構造もまた社会の下部構造であるとすれば、今のSNSの乱立と繁栄は下部構造の急激な変化だということができる…

規範のクラスター化と権力の新しい形

先日のある会合での、女性の社会学研究者どうしの会話が異常に頭に残ってしまった。 A氏「恋愛も結婚も勉強も就職も、今の時代にはテンプレートがあるのだから、その通りやればうまく行くのに、テンプレートを知らない人、知っていてもできない人がいるのが…