奪われた言葉

「奪われた言葉」

 白井京月

 

叫ぶ言葉さえ奪われた世界では
創造することなどとてもできず
考えることなどどてもできず
ただ、時の流れに耐えるしかない

小鳥のように囀ることも
子猫のように鳴くことも

いつまでも続くであろうこの世界から
いったいどうやって逃げ出せばよいのか

警察に行って
親戚になりすまし
行方不明届を出したとしても
世界から消えることは難しい

起きる時間も
食べるものも
仕事をする時間も
すべては世界の命令だ

笑顔も
会話も
恋愛も
マニュアル通りでなければならない

そして、この世界は自由だと述べなければいけない

もしも別の世界があるならば
もしも別の時代に生まれていたならば
もしもを思い
目を閉じて
静かに眠る

もう、ここに言葉はない
もう、どこにも詩人はいない 

あるのはプログラム用の記号
あるのはプログラム用の文法

世界はシステムへと堕落した

人間は生命ではなくなった

私はいまや人間ではない

私は人間でありたくはない

この霊言だけが思いをつなぐ糸だ

つまり

私は人間でありたくはない、と