白井京月の研究室

経済学・社会学・政治学

精神障害者という枠

私が精神障害者になったのは、2012年だ。障害年金を申請し、障害者手帳を取得した。これで人生が変わった。

一般世界は経験していたが、障害者世界がどんなところなのか、まったく無知だった。障害者就労があることは知っていたが、就労継続支援A型やB型のことは知らなかった。障害者地域生活支援センター(サロン)のことも知らなかった。ヘルパーさんが無料だということも知らなかった。網の目のような精緻な世界がそこにはあった。

2015年、私は初めてB型に通い出した。日当1000円。私のプライドはズタズタになった。一般就労には、オープンとクローズドがある。オープンとは障害者であることをオープンにして障害者枠で就職すること。クローズドとは、障害者であることを伏せて一般就労することだ。そこには障害者就労支援というビジネスもある。

ステップアップという嫌な言葉もある。B型からA型へ、そし移行支援へとステップアップするのだという。障害者にとっても働くのが良いことだという前提。悪しきワークフェアの思想。腐った自立支援の慣れの果て。今の精神障害者世界は腐臭で満ちている。もちろん、例外はある。何がいけないのだろう。

現行の制度は、緩やかな隔離政策だ。精神障害者という括りでグループを作る。インクルージヴを謳いながら、まるで逆行することをやっている。具体的に言えば、健常者の友達のいる精神障害者は圧倒的に少ない。

精神科医の責任は極めて重い。軽症ならば一般世界で生きられるのに、安易にB型を推奨したりする。それによって、重症化し、精神障害者世界から出られなくなった人の、どれだけ多いことか。

社会は精神障害者を枠に入れたいのだろう。私は枠から出たいのだ。といっても就労したいということではない。枠の中の息苦しさ。それに、耐えられない。